【担当者向け基礎知識】自治体が脱炭素社会に向けてEV充電インフラを整備・推進するには?背景から実際の導入フローまで徹底解説!
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近年、「持続可能なまちづくり」や「地域の脱炭素化」の一環として、電気自動車(EV)など電動車用の充電インフラの整備に着手する自治体が急増しています。
とはいえ、前例のない取り組みのため、いったい何から始めれば良いのか?何をしたら良いのか?といった担当者からの戸惑いの声も少なくありません。そこで本記事では、自治体がEV充電インフラを整備・推進するための基礎知識について、背景や実際の導入フローなども交えて紹介いたします。
自治体がEV充電設備を導入する背景

そもそも、なぜ今、EV充電インフラの整備が必要なのでしょうか。
その答えは「脱炭素」や「カーボンニュートラル」という言葉に代表される地球環境への配慮です。
現在、二酸化炭素排出量の多くを自家用乗用車を中心とした運輸部門が占めています。そのためガソリン車を電気自動車に置き換える「EVシフト」が実現すれば脱炭素化に向けて大幅な改善が期待できます。運輸部門の中でも半数を占める自家用乗用車のEV化を促すためには、ドライバーが安心してEVを購入できるよう、自治体が主導となって充電インフラ環境を整える必要があるのです。
◎脱炭素化への一番の近道は “EVシフト”
脱炭素化への一番の近道はEVシフトです。EVの普及と脱炭素化の関連性について、実際の統計を交えた試算をご紹介します。
日本の二酸化炭素排出量約10億4,400万トンのうち、17.7%が運輸部門からの排出であり、その量は約1億8,500万トンにものぼります。運輸部門のうち、45.7%が自家用乗用車によるもの。残りは貨物車やバス、タクシーなどの商用車、自動車以外の鉄道や航空などで構成されています。
つまり、自家用乗用車をガソリン車からEVやPHVなどの電動車に変えるだけで、運輸部門全体の約半数のCO2排出量を改善することができるのです。
※出典:国土交通省「運輸部門における二酸化炭素排出量」(令和4年7月5日更新)
その他貨物車や商用車などはすぐの改善が難しいことなどを鑑みると、技術や市場が成熟しつつある自家用乗用車のEVシフト化が一番手っ取り早く、かつ一番効果的に脱炭素化できる近道であることがわかります。
◎EVは2022年から本格的な普及へ
日本政府は2035年までに乗用車新車販売における電動車の比率を100%とする目標を掲げています。
先行する欧州の各国に比べ伸び悩んでいたEV・PHVの新車販売は、2022年には90,000台を超える過去最大の数値を記録し、まさに「EV元年」と呼ぶにふさわしい年となりました。
2022年末から日産「サクラ」の受注も再開し、2023年1月31日からのBYD「ATTO3(アットスリー)」の販売開始などの影響を受け、今後はEVの新車販売がこれまでとは比べものにならない速度で拡大していくことが予想されます。
【関連記事】データで振り返る「EV元年」こと2022年の電気自動車事情
◎浮き彫りとなった充電環境の課題
EVの普及にともない、喫緊の課題となっているのが充電インフラ環境の未整備、つまりEV充電器の不足です。
EVは主な充電シーンとして、①自宅や事業所で行う基礎充電、②移動途中に継ぎ足しで行う経路充電、③外出先での滞在時間を利用して行う目的地充電、の3つに分類されます。それぞれに適した出力、充電時間が異なるため、ドライバーは充電シーンに応じて急速充電器と普通充電器を使い分けることになりますが、いずれの設置台数もまだ十分とは言えず、迅速な拡充が求められています。
◎不足しているのは目的地充電
とくに、いま一番必要とされているのは目的地で使える普通充電器(目的地充電)の普及です。
日本政府は電動車の新車販売率と同じく、EV充電器の整備にも目標数値を掲げています。2030年までに15万基のEV充電器の設置を目標にしており、その内訳は急速充電器が3万基、普通充電器が12万基となっています。
2023年2月現在、日本にある急速充電器の数は7,998基、普通充電器は12,480基です。急速充電器が政府目標に対し26.6%の達成率である一方で、普通充電器は10.4%と大幅に後れを取っています※。
※2023年2月13日現在 EVSmart調べ
そこで、普通充電器の早期拡充が必要となりますが、自宅や事業所に設置される充電器(基礎充電)は個人・事業者単位での導入となるため、自治体が設置を支援する対象はおのずと目的地充電を想定した普通充電器に絞られます。
都心部に比べて地方では運転距離も長いので、目的地にEV充電器があるかないかで利便性と安心感が大きく異なります。目的地に来るまでに消費した電力を現地で補うことができなければ、わざわざ時間を費やして充電器の設置している場所まで足を運ぶことになるのです。実際に、充電器不足を不安視する声も多く、充電インフラ環境の未整備がEVの普及を妨げている要因のひとつであると考えられます。
地域住民が安心してEVを購入できる、EVで外出できるようになるためには、まずは目的地充電を中心とした充電インフラ整備が必要です。
◎地域の脱炭素化においては、自治体からの推進が不可欠
こうした状況から、地域の脱炭素化にはCO2排出量の割合を大きく占める自家用乗用車のEVシフトが重要であり、ガソリン車からEVへの乗り換えを促すには充電インフラ環境の整備が欠かせません。地域の住民が快適に安心してEVを使用できる環境の構築には、まずは自治体からこのEV充電器不足問題に着手する必要があり、公的な施設へのEV充電器の導入が急がれます。
また、充電環境を整備することで、エリア外からの観光客の誘致や滞在時間の延長にもつながるなど、脱炭素化以外の導入メリットもたくさん挙げられます。
さらに現在ではこうした充電設備の導入に国からの補助金も活用できるため、実際よりもコストの負担を減らして設置できることが、全体の後押しにもつながっています。
自治体が地域の充電インフラ整備を推進するには
自治体が充電インフラを整備するには、大きく分けて2つの施策があります。早期達成のためには、いずれかの取り組みだけではなく、両方を同時に進めることが重要です。
①自治体の管理施設への導入
交通の拠点である道の駅や、観光の拠点となる宿泊施設や観光施設など、多くの人が訪れる地域の主要な建物の駐車場へ充電器を設置することで、地域全体のインフラ整備に大きく寄与することができます。
まずは自治体もしくは自治体の指定管理団体が主となり、自治体の管理施設に積極的にEV充電器の導入を行うパターンがほとんどです。
さらにEV充電器を購入・設置する際に利用できる政府補助金「充電インフラ補助金」は、地方公共団体であっても利用することができます。補助金を最大限に活用すれば、低コストでEV充電インフラを整備することができるでしょう。
【弊社導入事例①】エコロシティ株式会社 / 大阪府庁駐車場(大阪府)
②充電インフラ補助金の創設
EV充電器を設置する事業者、または個人に対して自治体が独自の補助制度を設けることで、導入に対するハードルを下げ、地域全体で充電器の設置を推し進めることができます。
例えば、長野県では2022年4月に公園やスポーツ施設、宿泊施設などに充電器を設置することを努力義務とする条例を制定し、2030年までに「未設置区間ゼロ、電池切れゼロ」の充電インフラを整備する目標を掲げています。中でも有数の観光地である白馬村では、上限額を4万円として普通充電器の設置にかかる補助金制度を設けています。
また現在では、EV充電器の購入・設置に国の補助金も活用することが出来ます。
令和3年度補正予算の充電インフラ補助金では、充電設備の購入費は半額、充電器の設置工事費は満額(いずれも上限あり)が補助対象になっていました。工事費については設置場所や機器により補助額が異なりますが、例えば商業施設および宿泊施設に普通充電器を導入する場合、1基あたり135万円が上限の金額になります。つまり、工事費用を135万円以内におさめることができれば、設置者の負担は本体金額の残り半分と消費税分のみとなります。
これに加えて自治体独自の補助金を創設してさらに負担を軽減させれば、通常だと導入のハードルが高い施設においても、事業者は無理なく充電環境を整えられるようになります。
全国の地方自治体の補助制度については、次世代自動車振興センターのホームページでご確認ください。
\さらに詳しく解説/
EV充電器の設置コスト削減に役立つ
「充電インフラ補助金」とは?
※参考:一般社団法人次世代自動車振興センターHP内「申請の手引き」より
※補助対象となる項目や金額の上限は使用する充電設備や設置条件などにより異なります。
実際の導入フロー
では、実際にEVの充電環境を構築するにはどうすれば良いのでしょうか?施設へのEV充電器の導入フローとしては、以下の流れとなります。
- EV充電器の選定
- 導入施設の決定
- 運用方法の決定
- 現地調査
- 施設の電気設備に応じた工事内容の設計
- 補助金申請手続き
- 充電器設置工事
- 充電管理システムやユーザー向け課金システムの構築
- 利用者からのお問い合わせ対応
- ドライバーへの認知活動や集客対策
- 保守・メンテナンス
- 利用数に応じた増設検討・実施
インフラ環境としてEV充電器をきちんと機能させるためには、充電器を設置するだけでは足りません。設置後の運用・管理のためのシステムの構築や、不具合や質問があった際の問い合わせ対応、保守メンテナンスなど、必要な業務は多岐に渡ります。
これらをすべて担当者がひとりで行うのは非常に負荷が大きく、計画したものの途中で断念してしまうというのもよくあるケースです。また補助金が使えるからと充電器を設置したは良いものの、その後どうしたら良いのか分からずにそのまま放置してしまっている、という施設も少なくありません。
現在充電器スポットとして登録されている施設でも、故障した機器がそのままの状態で置かれ、現地に行くと故障中の張り紙が貼ってあったり、運用が面倒で使える状態であっても使用禁止としている施設が多数見受けられます。実際にEVに乗っているドライバーからは、使えると思って訪れた施設で充電器が利用できず、2〜3施設まわってようやく充電ができたという話もよく聞きます。
つまり、EV充電器は設置すれば終わりではありません。導入後もドライバーが継続的に利用できるよう管理・運用のサイクルを回す必要があるのです。
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※認証アプリ提供サービスでの、普通充電器の設置口数(2023年11月8日時点、GoGoEV調べ)

誰もが暮らしやすい持続可能なまちづくりへ
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