すっかり街に馴染んだ郵便局の赤いEV。電気自動車導入の裏側は?
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日本のEV普及は2022年ごろから顕著になってきました。それに先駆けてEVの可能性に着目したのが日本郵便です。2013年に集配用の車両にEVを試験導入し、2019年から本格的にEV導入を進めています。「EV」と書かれた郵便局カラーの赤い車を見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。
今回、EV導入企業の先駆け的な存在の日本郵便株式会社にインタビューを行いました。導入を決断したポイントや、EV充電の課題と解決策、そして今後の展望について伺います。
時代を先取りしたEV導入。2009年から検討
画像提供:日本郵便
日本郵便さま
環境への配慮・CO₂削減対策という観点で、2009年ごろから配送車両のEV化の検討を始めました。2013・2014年度に50台を試験的に導入し、活用できることが確認できたことから、2019年度より本格的な切り替えに踏み切りました。
日本郵便さま
EVとガソリン車を比較し、加速・積載・航続距離等、実際の集配業務に支障が出ないかについて検証しました。
日本郵便さま
現在のEVの性能では走行距離が長いエリアや寒冷地を除き、集配業務では支障ありません。
配備にあたっては、航続距離や充電環境などを考慮して、EVによる集配業務が対応可能なエリアから、順次拡大配備してきており、北海道や東北地方などの寒冷地に所在する一部の郵便局でも試行的にEVを導入しています。自動車の航続距離等の性能向上とともにEV対応できる範囲が拡がってきているという認識です。
日本郵便さま
2019年に三菱自動車の「ミニキャブ・ミーブ」という軽商用バンEVを400台導入しましたが、当時、比較検討できる車種は他にありませんでした。今後、現在採用している車種以外にもより良い選択肢が浮上した際には比較検討していくこととなります。
「現場からはポジティブな意見も」
画像引用:JP CAST
日本郵便さま
EV1台につき、1基の普通充電器を設置しています。業務終了後から翌朝にかけて充電し、翌朝は満充電の状態で出発します。
日本郵便さま
駐車場のEV充電器に接続するだけですので簡単です。「使い方がわからない」というような声も届いておりません。反対に、「ガソリンスタンドに給油しに行かなくてよいので便利」というポジティブな意見が現場から挙がっています。
これまではガソリンスタンドへ給油しに行くための時間と手間がありましたが、毎日充電できるEVであればそうした手間も不要です。
日本郵便さま
EVならではの静粛性や加速に驚いたという声も多いです。従来のガソリン車とは全く違う乗り心地を実感しているようです。
日本郵便さま
実際にEVを導入してみると、夕方に多くの車両が一斉に帰ってきて充電を開始するため、使用電力量が跳ね上がり電気料金も高くなるという問題が発生しました。集配担当の車両の多くは朝に出発して夕方に戻ります。充電するのも概ね同じタイミングです。
このため、夕方から夜にかけて大きな電力ピークが来てしまうことが課題でした。
日本郵便さま
「EV充電コントローラー(YaneCube)」と呼ばれる充電を遠隔で監視・コントロールできる機器を導入して、エネルギーのマネジメントを行いました。具体的には、夜間などの電気料金が安い時間帯に充電することで電力ピークをカットし、電気料金を抑えることができました。
画像引用:JP CAST
2050年度のカーボンニュートラルの実現
日本郵便さま
関係各社と協力してさまざまな取り組みを行っていますが、EVに近い領域ですと再生可能エネルギーの導入などが挙げられます。
たとえば弊社は中部電力グループと共同で戦略的提携を結んでおり、愛知県名古屋市の天白郵便局では太陽光発電設備と蓄電池の設置を進めています。再エネを活用したエネルギー最適化が狙いです。2024年春から太陽光発電を実施しており、地域のカーボンニュートラルに寄与できればと思っています。
日本郵便さま
引き続き「2050年度のカーボンニュートラルの実現」という目標に向かって積極的な取り組みを行いたいと思っております。
2025年度までのグループ中期経営計画である「JP ビジョン2025+」では、2030年度の温室効果ガス排出量を2019年度比で46%削減し、2050年度にはカーボンニュートラルの実現という目標を掲げております。
なお、当グループ全体の2023年度における温室効果ガスの排出量は約103万トンです。この間の取組により順調に削減を推進しています。EV導入によりガソリンの使用量が減少したことも成果の一つです。
2024年3月末時点で軽EVを約5,000台、EVバイクを約16,000台導入しており、今後は、軽EVを10,000台、EVバイクを14,000台導入する目標で、さらにこれらの動力となる電力も再生可能エネルギーにシフトしていく方針です。
カーボンニュートラルは容易な目標ではありませんが、企業として責任を持って取り組みを続けてまいります。